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2002 年度 実績報告書

中国明清両朝による「国史」の編纂と出版のプライオリティ

研究課題

研究課題/領域番号 13021212
研究機関山形大学

研究代表者

新宮 学  山形大学, 人文学部, 教授 (30162481)

キーワード出版文化 / 出版政策 / 中国近世 / 国史編纂 / 皇明通紀
研究概要

1、宋代において仁井田陞がかつて紹介した「出版取締法」としての出版法は、明朝においてその存在が確認できない。清朝の乾隆禁書の期間においても、書籍を出版しようとする士人が本籍の教官に正副二本を提出し、学政の審査をへて、初めて刊行を許可するという提案は、乾隆帝の上諭によって許可されなかった。従って、「出版法」の資料発掘によって、出版政策を明らかにしようとするアプローチには問題が多いと言わざるを得ない。
2、宋代史料に見えるいわゆる「出版法」は、近世中国において木版印刷が普及するとともに、王朝や士大夫による「知」の独占が崩れ始める中で、対応を迫られた王朝・士大夫側の試行錯誤の軌跡であったと考えられる。そこで争われたのは、決して王朝の出版業に対する施策、或いはまた現代につながるような版権の保護ではなく、王朝の権威や法律・国史・暦書の編纂に対する王朝が本来持つと考えられていたプライオリティの喪失をめぐってであったと考えられる。
3、陳建の「皇明資治通紀」の編纂と出版、そしてその広汎な普及は、出版が著しく活況を呈した明末社会では、王朝によるかかるプライオリティの保持がまさに危機に瀕していたことを如実に示している。かかる喪失の危機感が、明朝をして万暦年間に「本朝正史」編纂事業に着手させる契機となったと考えられる。その意味では、明朝は己の終焉に向けた一歩を確かに踏み出そうとしていたと言える。とはいえ、その万暦正史編纂事業も、その後頓挫した。そのため、読書人の「正史」への渇きは、陳建の通紀重刻や彼に続く沈國元や卜大有・馬晋允らの続作で癒さなければならなかった。万暦末年から明朝滅亡にいたるまで、あらたに上木された通紀は、十種以上にのぼった。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] 新宮 学: "明末内府で抄写された『皇明実録』の残本(資料紹介)"ナオ・デ・ラ・チーナ. 4号. 103-104 (2003)

  • [文献書誌] 新宮 学: "中国近世の出版統制(研究状況報告)"ナオ・デ・ラ・チーナ. 4号. 73 (2003)

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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