研究概要 |
本研究のもっとも基礎的な部分であり、また第一の課題でもある日本現存明版書誌の調査と収集については、正徳以前刊本、および嘉靖以後刊本で刊行者が明確なもの、特に坊刻本を中心に、310余部の実査を行ない、その書誌を収集しえた。2001,2年度の特定領域研究で収集しえた書誌は約650部であるから、今年度における書誌の調査と収集は、前二年とほぼ同水準を確保しつつ、おおむね順調に推移したと言えるであろう。また特定領域研究が開始される以前に、すでに蓄積されていた書誌をこれに加えれば、その累計は約1650部となり、坊刻書を中心とする明版書誌の研究に対し、定量的分析を可能にするだけの堅実な資料的基礎を提供するという目的も、ようやく近づきつつある。ただし収集しえた書誌の整理と公開、すなわち知見書目化については、資料の急増に整理作業が追いつかず、過去に蓄積された分にまで遡っての目録化を実現するには、当初に予想された以上の時間が必要となってきている。なお本報告書に記載の研究発表のうち「旧書筆記(六)」は、今年度に新しく得られた知見を主要な根拠としつつ、明代後半における書価の問題を論じたものである。 また同じく研究発表の項に記載した『金沢市立玉川図書館近世史料館蔵漢籍目録』であるが、これは2001年度に実施した調査結果を目録化したもので、すべて1300部たらず、1100O余冊を著録している。朱元明版や五山版、本邦旧しょう鈔本などの古版、善本を含む館蔵漢籍の全体を明らかにしたことは、日本現存漢籍書誌の研究にとって、ひとつの空白を埋めたものと評しうるであろう。なおこの目録の本文自体は、昨年度までに大体の完成を見ていためであるが、今年度にはこれを最終的に確定させるべく、必要な再査を行ない、その上で全体の解説と図版、図版解説を加え、更に索引を編纂してこれに附録した。
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