1.海外旅費を使用してロシア科学アカデミー東方学研究所サンクトペテルブルグ支所に赴き、ウイグル語文献の調査をおこない、新たに以下3種の仏典の同定に成功した。 2.同定した文献の1つ中国撰述仏典「慈悲道場懺法』のウイグル語訳には貝葉からなる断片類と巻子断片一本とが見付かった。同種のウイグル語仏典はベルリンにも保管されており、ロシア所蔵の貝葉類は体裁や内容から推してベルリンのものと同類であることがわかった。ロシア所蔵断片をドイツ所蔵品と比較しながら考察し、テキストエディションをおこなった。 3.同定した文献の2つ目は『千手千眼観世音菩薩陀羅尼』の貝葉形式の断片類である。このウイグル語仏典はこれまでベルリン所蔵の極小断片が知られるのみであったので、同定の意義は大きい。これら断片類を漢訳仏典と対照させてテキストエディションをおこなった。 4.同定した文献の3つ目は、『続命経』という小経のウイグル語訳巻子断片である。この仏典のウイグル語訳はこれまで見付かっていない。これについてもテキストエディションをおこなった。 5.以上でおこなったロシア所蔵ウイグル語仏典のテキストエディションを、ここ数年のウイグル語文献研究の結果と併せて単行本として完成させた。 6.モンゴル語仏典成立とウイグル仏教との関係をモンゴル語訳Lalitavistara中の借用語の分析によって議論し、論文として提出した。 7.ウイグル人の漢字使用法について「ウイグル漢字音」と「漢文訓読」とに焦点を中てて考察し、論文として提出した。
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