国内外数ヵ所収蔵の中国開版漢訳仏典の書誌調査を行い、古版仏典の所在目録作成のための資料を収集した。また収集した資料を利用し、「日本現藏趙城廣勝寺本《金版大藏經》」(当科研費報告書)を発表した。 中国で開版された木版大蔵経の殆どが日本には所蔵されているなか、《金版大蔵経》は、中国国家図書館にほぼ一蔵が所蔵されているほかは、中国域内・域外ともに極少数の存在が知られるのみである。《金版大蔵経》は、北京の中華書局によって出版された『中華大蔵経(漢文部分)』の主要な底本として影印されているが、中国国家図書館と民族文化宮所蔵本以外の民間に散在する零本は殆ど用いられていない。日本には少量ではあるが所蔵されているが、詳しい所蔵状況が不明であった。本科研による調査・研究によって日本における収蔵状況の概略が判明したので、そのリストを作成した。約50巻という少量とはいえ、従来充分には知られていないものも多く、民国時期に山西省広勝寺から発見されてから一部が民間に散逸していった状況をうかがう資料も確認できた。個々の経巻の書誌調査や、他の大蔵経との比較研究を継続してすすめているが、未だ原本の調査をしていないものもあり、できうる限り早期に調査を完了させ、所在目録および個々の経巻の書誌についての報告をする予定である。 また、「近代における大蔵経の編纂」(『常照』51号)において、明治以降の日本における大蔵経出版を中心に、中国や韓国での出版を含め、その出版状況の概略を明らかにし、活字本や影印本と、古写本・古版本の関係を考察した。
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