研究課題
13-14年度の研究成果として、敦煌出土文書のなかにチベット支配期終了後に書かれた文書57点があることを指摘し、チベット語が河西において非チベット人によって10世紀以降もリンガフランカとして広く使われ続けたことを解明した。その後、チベット語仏典について同じ視点から網羅的に調査・分析した結果、これまで想像しなかった大量の文書が10世紀に書かれたことが分かった。特定のスタインch.ナンバーをもった文書や冊子本、書体など文書学的特徴から年代測定が可能になってきたので、今後ペリオコレクションの中からも多くのチベット仏典が10世紀に同定されるであろう。これは、敦煌チベット文書についてのコンセプトを一変させることになる。その中にはコータン人の手になるものが多く含まれている。10世紀の敦煌やコータンにおいて、チベット仏教が生きており、チベット仏典が書き続けられていたことを示すものである。このように10-11世紀の書体や様式が同定できたことで、それに続くカラホト、エチンゴル文書との連続性が明確になった。後者については、協力者である井内真帆氏と共同で、大英図書館スタインコレクションとセントペテルスブルグのコズロフコレクションの調査を終え、データベースを作成中である。多くの文書の同定ができ、その結果、カラホト文書の年代は11〜16世紀、エチンゴル文書は20世紀初頭に到ることが判明した。研究成果の概略は、来年ボンで開催される国際チベット学会で発表し、全体のデータベースは、大英図書館国際敦煌学プロジェクトのwebsiteにおいて公開する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件)
The Silk Road : Trade, Travel, War and Faith
ページ: 50-56
Turfan Revisited
ページ: 341-348
Tibet and her Neighbours, A History
ページ: 43-54