研究概要 |
研究代表者は、古書・古籍にかかわる蔵書の整理と目録作成を、東北学院大学所蔵の葛原文庫について行なった。同文庫は弘前の教育家故葛原運次郎氏所蔵書であるが、線装書を含む内容から、古書・古籍のデータ整理の研究の一環としての目録作成と解題を行なったものである。さらに、古書・古籍に関わる目録法の統一化の考察を、国立情報学研究所(NII)の「和漢古書に関するコーディングマニュアル」、日本図書館協会の「日本目録規則改定案」などによる整合の動きに加えて、中国の「古籍著録規則」、わが国の伝統的古書目録法をも踏まえた古書・古籍に関わる目録法の標準化の考察を行なった。 研究分担者は、文物流伝の側面を、清朝後期を代表する王府として、また質量ともに優れた文物の蒐集で知られる恭親王家に焦点をあて、近代におけるその文物の流出を歴史的に辿り、王府文化解体の経緯を考察、さらに第二代恭親王、溥偉の動向に焦点を絞り、これまで注目されることのなかった文物売却や流出の政治的背景を明らかにした。恭王府より流出した二十数点の書画類の内、「陸機平復帖」「韓幹照夜白図巻戸陳容九龍図巻」「徽宗五色鶏鵡図巻」「顔真卿自書建中告身帖」などに代表される乾隆御物に見えるが如き、恭王府旧蔵文物の秀逸性の確認と、またその流出ぶりの徹底ぶりなどから、清朝や皇族に蓄積された文物が、母体であった清朝の滅亡と,腹壁資金捻出を図る売却をも織り交ぜてその再興を夢想した溥偉らの時代錯誤"復辟"への思惑によって自己解体されてゆく皮肉また過酷な近代化の過程と見得る考察を行なった。
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