研究代表者は、古書・古籍に関わるデータ整理の一環として、東北学院大学所蔵の曽我部文庫(故曽我部静雄氏旧蔵書)及び葛原文庫(故葛原運次郎氏旧蔵書)の目録作成を行ない、また新出の文庫としての解題を行なった。前者は線装漢籍を主とし、後者は線装和書をも含む内容の目録であるが、新出データの所在を明らかにするものである。一方、古書・古籍に関わる現行の目録情報、書誌情報の用語及び書誌記述の統一性・標準性を追及する立場から全国的な書誌・書目情報の総合的把握(二次書誌的把握)と記述用語の史的研究も行なった。またわが国における書誌用語を含めた目録規則の確立が急がれることから、現行の日本目録規則(NCR)ほかの用語を含めた整合を、中国の文献著録規則等をも併せつつ行なった。 研究分担者は、書誌・書目情報の総合的把握と併せつつ、販売書誌等による、出版物を含む文物流伝の様相解明を行なった。近代のわが国の代表的書肆・文求堂の書目を網羅することにより、将来された多くの漢籍善本の紹介を行ない、同時にその社主田中慶太郎の足跡を辿り彼のわが国近代中国学確立に果たしたその意義の大なることを解明した。また、中国の清朝末期における、宮中秘档の散逸、流出ぶりを、永楽大典の日本流伝を例として、具体相の解明を行ない、更には、秀逸な文物の蒐集で知られる恭王府からの文物流出を、清朝末期の政治的背景を交えつつ探り、文物流伝の様相の一端を明らかにした。
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