打合わせをかねた予備調査を行ない、調査用紙の項目の確定、調査の規模・日程など進行計画を立て、東寺蔵宋版一切経の本格的な書誌調査に着手した。今年度は、大般若波羅蜜多経巻一より始めて、大般若経六百巻は、既に調査を了えた。年二回(夏・冬)の調査は、参加者七人乃至八人にて、四・五日間及び七日間という期間行ない、次の点が明らかになった。 (1)開元寺版が少なからず、混じり、又、大部な大宝積経などが開元寺版であり、東禅寺版調査の進展と共に、開元寺版の予備調査が必須となってきたこと (2)東寺蔵一切経には、多くの版心墨丁が認められること (3)東寺蔵一切経にも、混合帖が少なからず存在していること などである。 海外では、個人的に行なった調査で、中国国家図書館蔵東禅寺版零帖類の調査を了えたが、本科研のメンバーである梶浦晋氏の在外版大蔵経所在調査の進展に導かれる形で、海外調査の計画などを立てつつある。 なお、調書は、今後の調査の進行を速めるためにも、業者に依託して、打ち込み作業を順次了えていくこととした。その過程で、調査項目や記述形式などで、多くの微調整を必要とするなど、問題点も少なからず明らかとなった。 又、今年度は、国際学術研究集会には参加のみとなったが、論文集には東禅寺版の問題点を整理し、寄稿している。 一方で、宋版一切経舶載事業の、もたらした我邦文化への影響の一端について、東蜜僧意教上人頼賢を通じて解明し、口頭発表を了え、論文を『中世文学』に掲載した。
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