研究概要 |
本年度は,継続している本源寺蔵宋版一切経の調査目標(約三百帖)を完了し,残すところ約二百五十帖のみとなる。平成十六年度を以って,一応終了する見通しとなった。調査データを分析しつつ,順次,問題点をとりあげて,論文化して公刊していくが,そのうちの一点についてふれておくならば,東禅寺版主体の帖に開元寺版の一枚ないし二枚の刷印葉が混入する"混合帖"(野沢氏が開元寺版主体の帖で発見命名)の存在を確認しえたことを始め,少なからぬ新発見となる成果があった。五月の研究集会での口頭発表を予定している。 又,一方,東アジアにおける刊一切経の視点から調査に参加してきた寛永寺蔵天海版活字の調査(平成十年〜十三年:課題「寛永寺蔵天海版木活字を中心とした出版文化財の調査・分類・保存に関する総合的調査」)を更に展開し,近世における出版書肆(慶元堂)の関与と刷印の実際を追及し,「天保四年刊天海版追雕活字使用『仁王護国般若波羅蜜経』について」を公刊した。化政期以降の天海版の管理等を考える上で、慶元堂という出版書肆と寛永寺蔵板木類(大正期調書)との関係についてふれる予定である。
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