出版分野における日中間の学術交流は、近代日中文化交流史上において重要な意義を有すると同時に、国境を越えた新しい出版文化のあり方をも示すものでもある。 本研究においては、これらの出版分野における日中両国間の技術的・文化的・学術的交流に関する基本的な事実を辿り、また、これらの史実と当時の日中両国の社会的・文化的背景との関連について分析し、さらに印刷技術の多様化と東アジアの国際化を背景にした出版文化の変化についても考察してきた。 今年度は日中両国の新聞・雑誌、出版目録・販売目録や関係者の日記・書簡などを中心に調査を行い、新たな資料及び史実を発見し、近代における日中両国の出版分野における文化交流の全体像を明らかにする上で必要とされる研究成果を収めることができた。今年度においてすでに発表した論文の他に、中国近代出版史における重要人物である楊守敬、張元済などと日本人との交流に関する論文や、中国人の百万塔陀羅尼研究に関する論考も現在執筆中である。
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