本研究では、日本支配下中国・「満洲」「満洲国」の出版事象を、各時代の文化政策や出版法制を前提とし、資料の刊行、資料の集積保存さらには戦後中国による接収から資料の現在的所蔵状況、そして資料検索ツールズの整備と資料公開状況までの全過程として位置付けて研究を進めてきた。 こうした観点にたって、本年度は、満洲および満洲国の図書館・協会・企業資料室など資料集積機関の実態解明およびその所蔵資料について研究・調査を展開し、所蔵機関一覧や協会の設立事情、さらにそれら機関の刊行物などについて、ある程度成果をあげることができたと考える。 これらの書誌学的作業は、これまで空白状態であったこの時期の出版事象の研究への足がかりともなり、これまでまったく手付かずとなっていた「外地出版」日本語資料のいわば「外地版日本全国書誌」編成についても端緒をひらくことができたと思っている。そしてそれは、「東アジアの出版文化」研究ばかりでなく、歴史学・文学・地理学など隣接研究領域の調査・研究面においても、書誌的・資料的な面から大きく寄与できるものと確信している。
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