今年度は昨年度に続いて、中国における才子佳人小説の出版と受容、及び朝鮮・越南・日本における版本資料の調査とその分析に努めた。 研究成果の主たるものは、(1)「中国才子佳人小説の版本と諸外国への影響-「金雲翹傳」と「玉嬌梨」を例に-」(「東アジア出版文化の研究第4回研究集会」(2)「才子佳人小説対亜洲各国的影響」(「第二届中国古代小説国際研討会論文集」)(3)「中国才子佳人小説の影響-馬琴の場合-」(「高岡短期大学紀要第18巻」)である。(1)では、中国才子佳人小説の中国での出版状況、出版背景とその伝播を考察し、(2)では、才子佳人版本の形態的特徴と諸外国への影響を論じた。(3)では、江戸期における中国才子佳人小説の受容の実態を、馬琴の読書録及び出版を通して、出版における営利の追求の側面から考察した。そこでは、中国才子佳人小説に内包する「新趣向」と、書肆や作家の「用心(営利追求)」の合致こそが才子佳人小説の翻案を導いたと結論した。 また、今年度は『二度梅』を中心に据えた才子佳人小説の演変と出版について考察を加え、次年度には論文発表を予定している。 一方、昨年度から、継続して東アジアにおける才子佳人小説の受容のデータベース化及び中国での版本調査とそのデータベース化は進行中であり、随時新資料を加えている。たとえば、「金雲翹傳」に関して、朝鮮半島で「破唾漫草-金雲翹傳-」(『開闢』所収)の出版があり、高い文学的評価がなされていることも今年度初めて資料を入手したものであり、その分析を試みた。
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