研究課題/領域番号 |
13021253
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研究機関 | 独立行政法人国立博物館京都国立博物館 |
研究代表者 |
赤尾 栄慶 独立行政法人国立博物館, 京都国立博物館・学芸課, 保存修理指導室長 (20175764)
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研究分担者 |
富田 淳 東京国立博物館, 学芸部・東洋課, 中国美術室長 (20227622)
泉 武夫 京都文化資料研究センター, 資料管理室長 (40168274)
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キーワード | 写本の書式 / 初期の印刷物 / 金剛般若経 / 大慈大悲救苦観世音菩薩 / スタインコレクション / ペリオコレクション |
研究概要 |
本年度は、赤尾・泉・富田が大英図書館スタインコレクションとフランス国立図書館ペリオコレクション中の敦煌写本と初期の印刷物を中心に、写本の書式および印刷物の形式の変遷という観点から詳しく調査した。 その結果、写経の規格として知られる一行17字は、5世紀前半の遺品には見られず、太和三年(479)書写の奥書を有する『雑阿毘曇心経』巻第六(S996)がその初期の例であることが判明した。また一行17字という写経の規格については、四字一句・五字一句・七字一句などからなる偈頌(韻文)の部分が重要な鍵をにぎっていると考えるに至った。一紙の行数については、唐時代を中心に一紙28行の書写となっていることが判明したが、これは隋時代、おそらく開皇年間(581-600)以後の7世紀に入った時期に一紙28行の書写という規格が一般的となり、唐時代の天宝年間(742-756)頃までは行われたと見られることがわかった。この一紙28行という唐時代の規格は、契丹蔵の版本に継承されていくと推察される。 初期の印刷物に関しては、咸通九年(868)の刊記があることから、印刷年代が明らかな世界最古の印刷物として知られる『金剛般若経』(スタインコレクションOr8210 P2)の一紙の長さが73.0cmから78.0cmであり、一紙の行数も48行から51行と特別な規格であることが確認された。また版画として知られる「大慈大悲救苦観世音菩薩」は、大英図書館スタインコレクションとフランス国立図書館ペリオコレクションのものを比較検討した結果、上部の図像と下部の願文の2版に分けて印刷されていることがわかり、初期の印刷物の形式の一端が明らかとなった。
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