本研究は海外に流出した江戸時代出版絵本の多くを所蔵するボストン美術館を主としながら、メトロポリタン美術館その他、いくつかの機関が所蔵する資料を調査し、アメリカのイーストコーストにおける江戸時代出版絵本の所在目録を作成することを目的とする。 二年計画の調査研究の初年度である本年度は、本研究の中心となるべく予定していたボストン美術館の都合が急遽つかなくなり、さらには9月11日に発生したテロによるニューヨーク市のビル爆破事件の影響もあり、具体的な調査計画の調整を進めることができなかったため、大幅な遅れをきたしてしまった。以後、引き続き先方機関との調整を行った結果、研究協力者の岡崎久司氏(大東急記念文庫・学芸部長)らと共に、2月20日から27日にかけて、メトロポリタン美術館(ニューヨーク市)、パブリックライブラリー・スペンサーコレクション(ニューヨーク市)、フィラデルフィア美術館(フィラデルフィア市)、エール大学美術館(ニューヘブン市)エール大学バイネッキ図書館(同市)における江戸時代出版絵本の所在調査を行うことができた。当該調査期間中に、各担当責任者と面談し、今後の調査計画その他についての入念な打ち合わせを行った。一方、関係資料調査・閲覧のため、中国国家図書館(北京市)、上海博物館(上海市)の現地調査も行った。 今回の調査は短く限られた日程ということもあり、全体計画の予備調査的な段階で終わったが、これらの成果を踏まえて来年度に十分な成果をあげる予定である。なお、本研究でいう「絵本」とは、作品全体が絵本仕立てのものを指し、挿し絵を持つ一般の絵入り本は対象の外にある。今年度は基礎的作業として、その江戸時代出版絵本の台帳を作成すべく、各種美術館図録、各種図書館目録の中から該当絵本の抽出作業をも行った。 主たる調査対象と考えていたボストン美術館については、来年度も調査が可能か否か調整の結果、目下のところ微妙な状態であるが、極力実施の方向で努力する所存である。少なくとも、他の有力コレクションの調査については完了できるよう、各機関との調整を続けているところである。
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