研究概要 |
1.初期ガンに有効な治療法の一つである光線力学的療法(Photodynamic Therapy,・PDT)が新しい治療法として期待されている。PhotofrinやFoscanが現在PDT用剤として使用されているが、混合物であったり、水溶性が低い、バイオターゲッティング能が低い、光励起に使用するレーザー光の組織透過性が低いため深在性ガンに対して効果が低いなどの様々な問題点がある。これらの問題点を踏まえて本研究では深在性ガンに適用可能な新規水溶性薬剤の開発として、ポルフィリンより長波長に吸収をもつクロリンならびにバクテリオクロリン骨格へ種々の糖質を導入し、糖質機能とのシンクロナイズを目指してPDT用高機能性光増感剤の開発を目的としている。本年度は、水溶性ポルフィリンならびにクロリン類を用いた腫瘍マウスに対する薬剤の生体内動態およびPDT効果について検討した。 2.糖連結水溶性メタ置換ポルフィリン類ならびにクロリン類を、悪性黒色腫(B16F1)移植腫瘍モデルマウスへ投与し、種々の臓器における蛍光強度を経時的に測定することにより、連結する糖鎖と基本骨格の違いが光感受性物質の生体内動態に及ぼす影響を評価した。各臓器で薬剤濃度が最大になるまでに要する時間は糖連結水溶性ポルフィリン約12時間、糖連結クロリン類は約24時間以内で、FoscanやPhotofrinより迅速に集積した。レーザー照射によるPDT効果の検討において、水溶性D-グルコースクロリンにおいてFoscanと同様の抗腫瘍活性が得られた。
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