研究概要 |
本研究は,リポソームに,臓器レベル,細胞レベル,オルガネラレベルで正常細胞と耐性癌細胞とを識別する能力を有する分子を設計し,各プロセスが分子レベルでシンクロナイズすることにより相乗的に抗腫瘍効果を発揮する殺細胞キャリアーシステムの開発する.その基本戦略として, 1)臓器レベルでの識別:血中滞留性リポソーム(LCL)を用いることにより癌組織への選択的送達 2)細胞レベルでの識別:LCLをリガンドで修飾⇒細胞内で内在化⇒汲み出しポンプからの回避 3)オルガネラレベルでの識別 という,3段階の各ステップで正常細胞と(耐性)癌細胞を識別し,強力な選択毒性を発揮せしめる. 平成13年度は,癌細胞標的化リガンドの分子シンクロナイゼーションの最適化を中心に検討した. (1)リガンド修飾リポソームによる癌細胞標的化の最適化:耐性癌細胞に選択的に発現している細胞表面レセプターを標的とし,トランスフェリンレセプターにより標的化と最適化を行った. (2)細胞内動態における分子シンクロナイゼーションの最適化:二木博士(京大・化研)との共同研究により,エンドソーム膜融合能を有するGALA誘導体をリポソームに付与し,細胞質への放出効率を促進することに成功した. (3)フリーの抗癌剤とリポソーム封入型抗癌剤で抗腫瘍のメカニズムが変化するか否かを検討する.抗癌剤として,北大大学院薬学研究科の松田らが設計したECydについても検討を行い,細胞系では濃度依存性であること,in vivo系では時間依存性を示すことを明らかにした.
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