研究概要 |
粘菌は、進化的に初期に生まれた巨大アメーバ様細胞で、裸の原形質の塊とみなせる。しかし、この原始生命体は、単なる分子の集合体ではなく、外界情報を受容し、判断し、適切に応答する、いわば脳的機能を持つインテリジェントな生命システムである。粘菌の特徴を利用して、リズム特性に基づくインテリジェント機能を調べ、以下の成果を得た。 1.粘菌の迷路問題解法における最短コース検出精度の決定。 粘菌は迷路の出口と入口を最短コースで結ぶように管を形成する。どの程度の距離差を判定できるかを、リング状に這わせた粘菌で調べたところ、2%程度の長さの違いを検出していることがわかった。 2.リング状に結合した粘菌振動子系の集団モード解析。 同調した収縮リズムを示す粘菌を3個、4個、5個とリング状に結合して、振動リズムの集団パターンを測定・解析した。それぞれ、回転、一部同相、半周期の3モードが、回転、半周期、部分的同相/逆相、および隣同士が逆位相の4モードが、位相が72°ずれた回転、位相が144°ずれた回転、半周期、部分的な同相のモードが見られ、ホップ分岐の対称性解析の予想と一致した。 3.光誘導フラグメンテーションにおけるフィトクロームの関与。 フラグメント化の光作用スペクトル実験から、UVA紫外光,青色光、遠赤色光が有効で、赤色光は遠赤色光の誘導を阻害した。遠赤色・赤色光の交互照射による差吸収スペクトル実験から、光可逆変換するフィトクロームの存在が証明された。反応動力学モデルにより、光強度-応答曲線を定量的に説明した。
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