ポリアゾベンゼンポリマーの光異性化反応や分極配向など、電場や光を初期刺激とした自己組織化反応(シンクロナイズド現象)を利用すると、ポリマー薄膜の膜厚変調(表面レリーフ)や分極配向を光の波長と同程度の周期で変調することができる(フォトニック構造化)。ポリマー薄膜を光導波路として考えた場合、表面レリーフや分極配向の周期変調は導波光の実効屈折率を周期的に変調することに対応する。このため、例えば、表面レリーフの周期、方向、深さを制御することで、導波光の進行方向を自在に制御できる。 本研究では、DCMなどのレーザー色素をドープしたアゾベンゼンポリマー薄膜の光異性化反応によって形成される表面レリーフをPOT薄膜導波路への光入出力回折格子型結合器として用いた新しい光増幅素子、光波長変換素子を開発した。レーザー色素であるDCMをPOTに添加し、作製したスピンコート薄膜を光導波路として用いる。光導波路へ光を結合させるための表面レリーフを光異性化反応を利用して記録した。導波光にHe-Neレーザーを用いて、入力結合器からPOT薄膜導波路へ導波したのち出力結合器から出てきる光は〜0.5%であった。入射角度、入出力結合効率の理論値と実験値とはほぼ一致する。蛍光スペクトルの中心に近いNd:YVO_4赤色パルスレーザー(671nm)を導波させて増幅実験を行い、最大で0.5cm^<-1>の小信号利得を観測した。 今後、表面レリーフによるDistributed Bragg's Reflectorを導波路に組み込み、レーザー発振を狙う。また、POTそのものが二次非線形光学効果を示すことが知られている。ポーリングしたPOT薄膜にNd:YAGレーザーを導波させて第二高調波を観測した。今後、表面レリーフにより、導波したNd:YAGレーザー光と第二高調波のQuasi-Phase Matchingを行い、高効率波長変換素子を狙う。
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