平成14年度は、電極-細胞間シンクロナイゼーションに基づく培養細胞の遺伝情報発現制御を、細胞機能変換の手段として応用した、培養細胞による細胞デバイス作製や細胞分化誘導への展開を行った。 hsp70プロモーターの下流に、酵素、サイトカイン、ペプチドホルモン類のような生体有用物質の遺伝子を連結したプラスミドを作成し、形質導入した細胞は電位印加による有用物質産生制御が可能な細胞デバイスとなりうる。本年度はその例として、低周波・微小電位印加による分泌タンパク質産生細胞デバイスの作成を試みた。レポータータンパク質として分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)を採用した。hsp70プロモーターの下流にSEAP遺伝子を組みこんだプラスミドを作成し、これを用いて筋芽細胞であるC2C12細胞に形質導入して安定発現株を得た。この細胞に熱刺激、または電気刺激を印加すると、培地中に活性型SEAPが安定的に分泌されることが明らかとなった。 またhsp70プロモーターの下流に、神経細胞特異的分化誘導転写因子であるNeuroD2遺伝子、IRES領域、そしてEGFP遺伝子を連結したプラスミドを作成した。これを用いて神経芽細胞腫由来N1E-115細胞に形質導入した。この細胞は熱刺激および電位印加により神経突起を伸長し、神経細胞様へと分化することを、細胞形態変化および細胞内に発現したEGFPの蛍光観察により確認した。このことから電極-細胞間シンクロナイゼーションに基づく細胞分化誘導系を構築可能であることが示された。
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