研究概要 |
Az高分子膜にレーザの干渉露光を施すと、側方への物質移動が誘起され、表面レリーフ回折格子(Surface Relief Gratings, SRG)が形成される現象が1995年に相次いで報告された。このプロセスはアブレーションと異なり、強いレーザ光源を要せず(数10〜100mWcm^<-2>レベル)現像処理を要しない表面形状加工であり、その用途については光記録、フェーズマスク、液晶配向膜、表面造形等種々提案されている。この現象の発現機構を理解する目的の研究も精力的に進められている。 当研究において、高分子膜単独では数10mWcm^<-2>程度のアルゴンイオンレーザの干渉露光で長時間照射を施してもほとんどSRG形成は見られないが、5CBを混合した膜では極めて効率よく物質移動が誘起され表面レリーフが形成されることを見出した。単独膜と比べて液晶複合膜では2から3桁のレリーフ形成効率の上昇が見られた。この際SRG形成には予め紫外光を全面露光しておく必要があった。 液晶添加系で特徴的なことは、混合比の変化がSRG形成に大きな影響を及ぼすことで、ちょうどAzに対して5CBが2当量のとき特異的にSRGの形成効率が高くなった。レリーフ形状の消去は紫外線の低露光で行うことができ、書き込み/消去は何度も繰り返すことができた。100℃以上の加熱でも形状を消去できるが、この際は液晶分子の蒸発を伴うため繰り返しプロセスには不利であった。 一方、アゾベンゼンとシアノビフェニル系液晶分子との動的な相互作用を把握するために、両者を併せ持つコポリマーを合成し、単分子膜状態にて光で誘起される相互の配向変化に関する多くの情報を得た。
|