研究概要 |
ホログラムは光の干渉によって形成される回折格子中に光信号の強度情報と位相情報を同時に合わせもつため,二次元および三次元(立体)画像情報の高密度多重記録・再生が可能である。ホログラム記録を行うためには,材料の屈折率を局所的かつ周期的に変化させ回折格子を形成させる必要がある。本研究は,高速にホログラムが書き込め,書き換え可能,かつ現像などの後処理を必要としない高密度ホログラム記録材料を開発することを目標とした。本年度は,特に回折効率の向上を目指し,屈折率を大きく変調できるように液晶構造を最適化し,ホログラム形成挙動について詳細な検討を行った。 大きな屈折率変調度を達成するためには,光相転移により大きな複屈折率変化を誘起すればよい。そこで,液晶骨格として大きな複屈折性を示すことが知られているトランを選択し,光応答分子であるアゾベンゼンとのコポリマーを調製した。調製したポリマーのフィルム(500nm厚)に二光束のコヒーレント光を照射すると,干渉縞の明部でのみ相転移が誘起され,周期的な配向変化(屈折率変化)が起こって,回折格子が形成できることを確認した。形成した回折格子により回折されるプローブ光の強度をモニターして回折効率を測定し,これより試料中に誘起される屈折率変調度を求めた結果,トラン系高分子液晶を用いると最大で約0.08もの屈折率変調が達成された。また,このトラン系高分子液晶を用いた場合,回折効率は約30%であり,この系における回折効率の理論的最大値(34%)に近い値が達成できた。この結果を,一般的なシアノビフェニル骨格を有する高分子液晶と比較すると,屈折率変調度で約2倍,回折効率と応答速度は10倍以上,トラン系高分子液晶の方が優れていることが明らかになった。トラン系高分子液晶を用いた場合,格子間隔を1μmにまで狭めても(商用光ディスクを上回る50メガバイト/cm^2以上の記録密度に相当),10^<-2>オーダーの屈折率変調度が得られた(既存のホログラム材料は10^<-5>から10^<-3>程度)。さらに実際に三次元(立体)物体の画像記録を試み,肉眼でも非常に高い解像度で記録画像を認識することが可能であることが確認された。
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