研究概要 |
非線形光学材料では,どんなに素性の良い材料であっても,基本波と高調波との間での位相整合が容易に達成されないと,これらの素材を用いた新規な光デバイスの構築は非常に難しい。そこで,光自身の進行波によってこの位相整合を達成させる新規な手法を用いて,薄膜化可能な有機ポリマーを材料にして新たな光デバイス構築へ向けた研究を開始した。その手法とは,基本波と2倍の高調波とのパルスレーザー干渉波の3次の非線形光学効果により誘起されたDC空間電界(時間平均を取ると零でない)によるX^<(2)>構造制御である。この誘起効果によるX^<(2)>構造は周期的にポリマーバルク内に形成され,それらは互いに位相整合しており,結果的に進行波の導波路において,自己位相整合構造が形成されていくものである。 本年度は2倍波波長付近に吸収がほとんどないNLO色素をドープした試料を用いて効率よくSHGを得るために光導波路モードでオプティカルポーリングの双極子配向制御を検討した。ホストポリマーとしてPMMAを,NLO色素に1,4-Bis[2-[4-[N, N-di(p-tolyl)amino]phenyl]vinyl]benzene(BTAPVB)を用い,溶液キャスト法により石英板上にフイルム調製した。 本システムでは光路長(伝播長)の2乗に比例してSHG強度が増加しており,このことは光導波路モードオプティカルポーリングにより位相整合したX^<(2)>構造が成長していくことを実証するものである。さらに,26.3μm,50μm,86.6μm厚のBTAPVB(5wt%)試料を用いて測定を行った結果より膜厚が大きくなるにほど,得られるSHGも大きく,成長速度も速くなることが判明した。これはレーザービーム径が190μmであることを考えると,ビーム径に匹敵するほどの厚い導波膜では効率良くX^<(2)>構造が形成していくと考えられる。 オプティカルポーリング後のサンプルを面内回転しながらSHG活性を測定した結果,Dipolar成分のみならずかなり大きいOctupolar成分の寄与が判明した。一般的にOctupolar成分による1次の超分極率はDipolar成分によるそれより1桁から2桁大きい値であり,オプティカルポーリングによるBTAPVBの大きな非線形光学性が期待できる。
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