研究概要 |
本研究では、能動イオン素子のモデルとして、正荷電層(P層)、pH記憶負荷電層(N層)を有するPNP型pH記憶イオン素子を作製し、このイオン素子のイオン輸送特性をソース、ドレイン、ゲートセルを有する3セル拡散透析実験系において評価した。そのため、まずポリビニルアルコール(PVA)に2mol%のアクリル酸基を共重合組成として含むポリマーとポリアリルアミンをポリマーブレンドしてキャスト製膜することでN層を作製し、またこの膜の両側にポリアリルアミンとPVAで作製した,P層を張り合わせ、160℃で熱処理後、グルタルアルデヒドで架橋することで、PNP型pH記憶イオン素子を作製した。そのイオン素子を3セル型セルにセットし、ソースセルにKC1、ドレインセルにNaNO_3溶液を入れ、ゲートセルのpHを変化させながらソース-ドレイン間の各イオンの輸送を測定した。その結果、ゲートpHが高い場合に、ソース-ドレイン間のカチオン輸送がON状態、アニオン輸送はOFF状態になり、この状態はゲートpHを中性付近(pH5.5)にしても長時間記憶保持した。そしてゲートpHを低くした場合は、先ほどとは逆にソース-ドレイン間のカチオン輸送がOFFに、アニオン輸送がON状態となり、ゲートpHを中性付近(pH5.5)にしてもこの状態を長時間記憶保持した。これらのことからこのイオン素子はゲートpHによりソース-ドレイン間のイオン輸送を選択的にON-OFFスイッチングを行う機能を有していることが判明した。
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