本研究の目的は、精密に分子設計されたホスト化合物のように堅い相互作用ではなく、ターゲツト分子に応じてシンクロナイゼーションを行うフレキシブルな合成ペプチドを、コンビケムの手法により開発することである。さらにシンクロナイゼーションを情報変換することにより分子センサとしての機能を持たせる。 情報変換部位として、p-ニトロフェノールを色素部位とする脂溶性ペプチド誘導体を7種類合成した。これらの化合物を用いて、疎水場での有機アミン類との相互作用を調べた。アミンは様々な長さのアルキルモノアミン、ジアミンを用い、さらに生体内ポリアミンであるスペルミン、スペルミジンについても検討した。 アミンとの結合はコントロール化合物が最も弱かったが、Leu残基の数が増加するにつれて結合定数は大きくなった。特にLeu-Leu-Leu誘導体はスペルミン、スペルミジンに対しては、10^4M^<-1>オーダーの強い結合を示した。また、Leuのかわりに導入したβAlaの位置が色素部位に近いほど、アミンとの結合は弱くなった。これらの結果から、アミン結合能はN末端のLeu残基のみが関与しているのではなく、Leu-Leu-Leuという配列が重要であることが示唆される。 Leuが一つだけβAlaに置き換わることにより、アミンとの親和性が大きく異なるという興味深い現象が見られた。このペプチド誘導体は、アミン以外にも多様な分子をターゲット分子とすることができ、極めて自由度が高い。今後ペプチドライブラリーをもっと増やせば、非常に高い選択性を持つペプチドを見つけだすことが可能であると思われる。
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