体温付近で親水性〜疎水性変化する温度感受性ポリマーの複合化による温度感受性インテリジェント遺伝子デリバリーシステムの開発を試みた。本年は、高分子鎖が末端に疎水性部位をもつ温度感受性ブロック共重合体、(2-エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル(EOEOVE)-オクタデシルビニルエーテル(ODVE)ブロック共重合体で修飾したカチオン性リポソームとプラスミドDNAによるリポプレックスの形成およびその遺伝子導入に及ぼす温度の影響について検討した。 数平均分子量が6900、9300、および16700である3種類の共重合体で修飾したリポソームを調製した。このリポソーム上においてこれらの共重合体は、約36℃でコンホメーション転移を示した。これらの共重合体で修飾したカチオン性リポソームのゼータ電位を測定したところ、35℃以下においては低い表面電位を示したが、35℃と40℃の間で急激に表面電位が増大することがわかった。このことは、35℃以下においては、高分子鎖によって正電荷を帯びた脂質膜表面が覆われ、その電荷がシールドされるが、高分子鎖が転移すると荷電表面が露出することを示している。共重合体修飾カチオン性リポソームとプラスミドDNAとの複合化について検討したところ、両者が複合化し、共重合体を含むリポプレックスが得られることがわかった。共重合体修飾リポプレックスによるCV1細胞へのルシフェラーゼ遺伝子の導入について調べたところ、32℃に比べて、37℃において遺伝子導入活性が高まることがわかった。リポプレックス上の共重合体のコンホメーションの違いが、リポプレックスと細胞との相互作用に影響を与えているものと考えられた。
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