研究概要 |
本研究では天然型抗体酵素の基礎的研究を行うと共に、Helicobacter pylori菌の表面タンパクさらにはインフルエンザウイルスのコートタンパクを破壊する抗体酵素を得るのが第1の目的である。また、同一の抗原分子に対して作製した複数の抗体酵素を同時に組み合わせて協同的に作用させ、抗原タンパクに対する破壊能力を飛躍的に高めることも併せて検討するのが第2の目的である。 本年度の実施計画の1つであるスーパー抗体酵素(41S-2-L)に対する抗イディオタイプモノクローナル抗体の作製はうまく行えた。得られた抗体の中、i41-3およびi41-7はスーパー抗体酵素と特異的に反応した。しかも、i41-7抗体はペプチダーゼおよびプロテアーゼ活性を持っていた(平成14年度日本化学会発表予定)。また、i41-3抗体はinternal imageをしている特徴ある抗体であると思われる。また、i41SL1-2も抗イディオ様抗体として取得できた。面白いことにこの抗体は軽鎖および重鎖共にペプチダーゼ活性を示した。そして、抗原の分解はどちらもMichaelis-Menten式に従っていた。軽鎖ではkcat=0.6min^<-1>, Km=1.98x10^<-6>M, kcat/Km=3.1x10^5min^<-1>M^<-1>, 重鎖ではkcat=0.6min^<-1>, Km=1.27x10^<-5>M, kcat/Km=4.9x10^4min^<-1>M^<-1>となった。インフルエンザウイルスのhaemagglutinin分子の2カ所の不変領域配列TGLRNおよびGITNKVNSVIEKをもつペプチドを合成し、抗体作製を行ったが、免疫したインフルエンザ抗原ペプチドに反応したが、他のタンパク質ともかなり交差反応を示し、目的の性能をもつクローンは取得できなかった。Helicobacter pylori菌(HP)のウレアーゼに対するいくつかの抗体が触媒三つ組み残基様構造(Asp, His, Ser)をとっており、それらはペプチダーゼ活性を持つと推定される。現在、この活性試験に入っている。
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