間葉系幹細胞とは間葉系の組織すなわち骨・軟骨・脂肪細胞・骨格筋・靭帯・腱・真皮などの結合組織への多分化能を有する幹細胞として定義されてきた。しかし、最近このような間葉系組織に加えて、心筋・平滑筋・血管内皮などの臓側中胚葉系にも分化する中胚葉幹細胞が成体の骨髄ならびに骨格筋・真皮に存在することが見出された。Catherine Verfaillieらはヒト骨髄から無血清培養により通常の間葉系幹細胞よりも小型の形態を持ちCD13・CD49b強陽性、CD90弱陽性、CD34・CD117・CD45陰性の表面マーカーのパターンを持つ細胞を取得した。本細胞は骨格筋、骨・軟骨・脂肪・ストローマ細胞に加え血管内皮細胞さらには内胚葉・外胚葉系に分化できる多能性を有し、レトロウイルスベクターを用いたSingle cell markingの手法を用いることでこれら細胞が一つの細胞から由来することが示された。我々はマウス骨髄よりCD34・CD117陽性、CD45陰性の細胞株KUM2を取得し、本細胞が心筋に対する分化能を有することを見出した。間葉系に対する分化能のみを有するヒト骨髄由来間葉系幹細胞はCD90陽性、CD34・CD45陰性である。また同様のマウス骨髄間葉系幹細胞(KUM9)はCD34・CD117・CD45陰性である。これらの結果は、間葉系組織を誘導する幹細胞には階層構造が存在することを示している。また間葉系幹細胞は成体組織において、骨髄だけではなく骨格筋や真皮などの結合組織にも存在することを示している。
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