研究概要 |
本年度の研究により以下のことが明らかになった。 1.新規光学活性ポリチオフェンの合成 光学活性基を側鎖に導入したHead-to-Tail(HT)型ポリチオフェンpoly(3-[2-((S)-(+)-1-methy octyloxy)ethyl]thiophene)(HT-P(S)MOET)を合成した。^1H-NMRスペクトル測定によりHead-To-Tail率を算出したところ82%であった。HT-P(S)MOETが有する光学的特性を調べるためにUV-Visスペクトル、蛍光スペクトル測定を行った。CDスペクトルでは正のコットン効果が観察され右旋性が確認された。 2.フッ化アルキル基を有する立体規則性ポリチオフェンの合成 ^1H-NMRから求めたHT型poly(3-perfluorohexylthiophene)(HT-PFHT)のHT率は86%となり、HT型poly(3-hexylthiophene)(HT-PHT)の93%と比較すると低下した。またHT-PFHTの分子量はMn=8,000、Mw=14,000、多分散度は1.75となった。重合度の低下は、側鎖のC-F結合に起因する電子吸引効果によって、高分子合成の成長活性種に変化が現れたためと考えられる。HT-PFHTの極大吸収波長はHT-PHTと比較すると大きく短波長化した。一方、これらのLangmuir-Blodgett膜では、極大吸収波長がスピンコート膜に比べて長波長化したことから、より高い自己組織性を示すことが分かった。 3.フッ化アルキル基を有する立体規則性ポリチオフェンの特性 未ドープのスピンコート膜の導電率は、HT-PHTでは7.29×10^<-6>Scm^<-1>、HT-PFHTでは10^<-10>Scm^<-1>以下となり、いずれも絶縁性を示した。これらのスピンコート膜をSbCl_5でドープすると、HT-PHTは暗色化し、3.09×10Scm^<-1>の導電性を示したが、HT-PFHTでは暗色化が観察されず絶縁性を示した。サイクリックボルタンメトリー測定から、他のポリチオフェンがp型半導体特性を示すのに対し、HT-PFHTはn型の半導体特性を示すことがわかり、電界発光素子の電子注入層として期待できることがわかった。
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