遺伝子の全塩基配列の解明がほぼ完了しつつあり、ポストゲノムシーケンスにおいて、ゲノム構造の特異性や機能の解明が注目されている。機能ゲノム科学の中でも、特に注目されているのは、遺伝情報だけでなく、生体系の共有結合の連結や切断に対して触媒機能を有する核酸、いわゆるリボザイム(またはデオキシリボザイム)である。そしてこれらリボザイムの大量合成系として、ローリング・シンクロナイゼーション法を用いた、新規のリボザイム合成システムが注目されている。ローリング・シンクロナイゼーション法は、一本鎖環状DNAを鋳型として、同じ配列が繰り返された長鎖RNAを合成する転写反応である。しかしその反応機構の詳細が明らかにされていないため、高いリボザイムの合成収率が期待できない。そこで本研究では、表面プラズモン共鳴法を用いて、RNAポリメラーゼとハンマーヘッド型リボザイムの配列が組み込まれた63ntの環状DNAの認識過程の反応機構の解明を行った。その結果、環状DNAは、同様の配列を有する直鎖状DNAよりも25℃の条件下で、約1kcal/mol安定なT7RNAポリメラーゼとの複合体を形成することが見出された。さらに、高収率のリボザイム合成が期待できる鋳型DNAの二次構造予測システムを構築するために、三重鎖や四重鎖構造に対する金属イオン効果の定量化もできた。
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