金属ナノクラスターの分散・配列系における分子シンクロを利用した情報変換と伝達

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13022274
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 山口東京理科大学
• 研究代表者: 戸嶋 直樹 山口東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (50011010)
• キーワード: ナノクラスター / 金属ナノ粒子 / 金属超微粒子 / シクロデキストリン / 刺激応答 / 液晶 / 自己組織化 / コア / シェル構造

研究概要

(1)シクロデキストリンの分子認識能を利用したシクロナイゼーション材料
シクロデキストリン(CyD)のポリマーを用いて、粒径が小さく粒径分布の狭く安定な金ナノクラスター分散液の調製に成功した。この分散液に、極く少量のメルカプトカルボン酸を添加すると、メルカプトカルボン酸はCyDに包接され、金ナノクラスター分散液の色が赤から紫色に変化した。これに水酸化ナトリウム水溶液を添加すると赤に戻った。この色変化は可逆的であり、微弱な化学的刺激に応答する分子シクロナイゼーション材料が構築できることが分った。
(1)液晶分子で保護したPdナノクラスターの液晶デバイスへの応用
液晶分子の4-シアノ-4'-ペンチルビフェニルで保護したPdナノクラスターを合成し、液晶素子の媒体に混入したところ、相溶性がよく、均一な液晶素子ができ、コントラスト性能も向上させることができた。すなわちPdナノクラスターを分散させることにより、液晶に電界を印加したとき、液晶の応答に変化をもたらすような、液晶シンクロナイゼーション材料の創製に成功した。この系はさらに、新しい液晶表示システムへも応用可能であると考えている。
(2)自己組織化による新規Pd/Ag/Rh三元金属ナノクラスターの創製
犠牲的水素還元法を用いて、Pd-コア/Ag-シェルの二元金属ナノクラスターを合成した。これに別に、合成したRhナノクラスターを物理混合すると、自己組織化によりPd/Ag/Rhの順に内核から外殻へと三重コア/シェル構造になったPd/Ag/Rh三元金属ナノクラスターの分散液が生成した。このナノクラスターは、単独Rhナノクラスターはもとより、他のどの組み合わせの二元金属ナノクラスターよりも高い触媒活性を示し、新しい分子シンクロ材料が創製された。

研究成果

• [文献書誌] N.Toshima: "Effect of Additional Metal Ions on the Catalysis of Polymer-Stabilized Metal Nanoclusters"J. Mol. Catal., A, Chem.. 177(1). 139-147 (2001)
• [文献書誌] 戸嶋直樹: "コア・シェル構造合金ナノクラスターの合成と触媒作用"Bull. of Cluster Sci. Technol.. 4(2),8. 3-7 (2001)
• [文献書誌] N.Toshima: "Novel Synthesis, Structure and Catalysis of Inverted Core/Shell Structured Pd/Pt Bimetallic Nanoclusters"Eur. Phys. J., D.. 16. 209-212 (2001)
• [文献書誌] N.Toshima: "Preparation, Characterization and Catalyses of Light-Transition-Metal/Nobel-Metal Bimetallic Alloy Nanoclusters"Stud. Surface Sci. Catal.. 132. 243-246 (2001)
• [文献書誌] Y.Shiraishi: "Synthesis and Catalysis of Polymer-Stabilized Ag and Ag/Pd Colloids"Stud. Surface Sci. Catal.. 132. 371-374 (2001)
• [文献書誌] 柳田博明: "微粒子工学大系 第II巻(高分子支持金属コロイド触媒)"フジ・テクノシステム. 1,000 (2002)
• [文献書誌] A.T.Hubbard: "Encyclopedia of Surface and Colloid Science (Catalysis by Metallic Colloids)"Marcel Dekker(In press). (2002)