知的超並列プリプロセス

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13023205
• 研究機関: 豊橋技術科学大学
• 研究代表者: 米津 宏雄 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (90191668)
• 研究分担者: 古川 雄三 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (20324486)
• キーワード: 視覚機能 / エッジ検出 / 動き検出 / アナログ集積回路 / 超並列ネットワーク / 広ダイナミックレンジ / 局所適応 / 特性ばらつき

研究概要

生体の網膜・脳機能に学んで、動き検出と形状認識の基本ネットワークを統合した知的プリプロセッサを実現するための基盤技術の構築を図った。具体的には、入力部として、広ダイナミックレンジを有する物体のエッジ検出機能を実現した。次いで、物体のエッジ情報を入力として、三次元空間を直進運動する物体の動き検出と簡単な形状を認識する機能を統合した。さらに、デバイス特性のばらつきに弱いという、アナログ集積回路の問題点を克服するための回路的工夫を図った。
網膜が二種類の視細胞によって明暗の広い領域に順応する仕組みを参考にして、暗領域では増幅度が自動的に大きくなり、明領域では増幅度が小さくなる回路を取り入れた。これにより、同一画面内に明暗領域が混在する場合にも、約5桁のダイナミックレンジを持つ局所適応機能を有するエッジ検出回路が実現できることを回路シミュレーションによって明らかにした。
三次元空間を直進運動する物体の動き(方向と速度)を検出する回路と類似性の高い回路によって簡単な形状を認識する機能が得られることを明らかにした。試作した二次元ネットワークを有するアナログ集積回路を用いて、回路シミュレーション結果にほぼ一致した、方向と速度の情報が出力されることを実験的に確かめた。これにより、オプティカルフローと速度適応機能の集積回路化の見通しが得られた。
デバイス特性のばらつきについては、回路シミュレーションにばらつき特性を組み入れて、回路の評価をした。エッジ検出機能においては、フィードバック機能を有する固有回路が、特性ばらつきに強いことが明らかになった。一般の回路では、トランジスタを並列接続した回路が、特性ばらつきに対して強いことが示された。特性ばらつきに強いアナログネットワークを実現する方法として、固有回路と並列回路による構成が有効であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] K.Nishio, H.Yonezu, M.Ohtani, H.Yamada, Y.Furukawa: "Analog Metal-Oxide-Semiconducter Integrated Circuit Implementation of Approach Detection with Simple-Shape Recognition Based on Visual Systems of Lower Animals"Optical Review. (2003)
• [文献書誌] M.Ohtani, H.Yamada, et al.: "Analog LSI Implementation of Biological Direction-Selective Neurons"Japanese Journal of Applied Physics. 41・3A. 1409-1416 (2002)
• [文献書誌] H.Yamada, T.Miyashita, M.Ohtani, K.Nishio, et al.: "An Integrated Circuit for Two-Dimensional Edge-Detection with Local Adaptation Based on Retinal Networks"Optical Review. 9・1. 1-8 (2002)
• [文献書誌] K.Nishio, H.Yonezu, M.Ohtani, H.Yamada, et al.: "Analog Network for Detection of Approaching Object with Shape Recognition Based on Visual Systems of Lower Animals"9th Int. Conf. on Neural Information Processing, Proceedings. 1428 (2002)
• [文献書誌] W.-C.Kim, J.-H.Kim, M.Lee, J.-K.Shin, H.Yonezu: "Biologically Motivated Active Vision System Using Artificial Retina Chip and Shape Memory Alloy Actuator"9th Int. Conf. on Neural Information Processing, Proceedings. 1356 (2002)