研究概要 |
プラナリアは再生能力が強いことで知られており、完全固体を横方向に切断しても前切片虫および後切片虫とも再生し、最終的には二つの完全個体になる。それどころか、いくつかの種類においては、ある一定の大きさになると自ら分裂(fisshon)して二個体となることも知られている。このような不思議な性質から「プラナリアは刃物に対して不死身」とも呼ばれ、一般にも知られている。プラナリアの再生に関する研究はT.H.Morganをはじめ多くの生物学者によって研究され、その機構について生理勾配説、極性説、物質説などさまざまな学説が提出されてきたが、いまだに確定されるにいたっていない。報告者は、プラナリアの再生には、何らかの物質が関与していると仮定し、本研究を行った。 実験には、再生能力の高いリュウキュウナミウズムシのクローンOH株を用いた。研究開始当初数匹であったプラナリアを数千匹以上に殖やすことには昨年までに成功している。それらを用いて、物質関与を証明する実験を検討した。生物学者を中心としたこれまでの研究から、脳を持たないプラナリアの切片虫は、まず脳を再生しその後に各組織の再生が始まることが知られている。以上、無秩序状態から脳は再生することから、物質関与の証明がしやすいと考え、脳再生に注目した。各部再生ホモジナートを、プラナリアに注入する方法や、飼育液に加える方法など様々な実験を行ったところ、いくつかにおいて脳再生抑制効果を観察したが、再現性において問題があった。一方、高密度(10匹/3mL)で飼育した飼育液中では、断頭した切片虫の脳再生を著しく阻害することがわかった。この方法で調製した飼育液は、再現よく脳再生を抑制することが判明した。さらに正常な頭部と比較して、脳再生が不充分な状態でも眼点の再生が起こりうるという、これまでの報告とは異なった現象も観察した。この活性は、熱処理(100℃,5分)でも維持された。比較として10倍濃度のアルブミン水溶液中での再生実験を行ったところ、本現象は観察されず、飼育液の汚染が原因ではなく、特定の物質が関与していると予想することが出来た。 次に、活性成分の分画を検討した。酢酸エチル-水で分配したところ、水層に活性あることが判明した。また、ゲル濾過では後半溶出部分に、限外濾過では外液に活性を回収した。以上のことから、活性成分はペプチド或いは、水溶性多糖ではないかと推定している。現在、活性成分のHPLC分析について検討している。
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