神経細胞の分化を制御する微量天然生理活性物質の探索およびその作用解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13024207
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 大泉 康 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (00006355)
• 研究分担者: 齊藤 真也 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (80271849)
• キーワード: 神経細胞分化 / カノコジオール / β-ユーデスモール / スカブロニンG / スカブロニンGメチルエステル / MAPキナーゼ / 神経成長因子 / PC12D細胞

研究概要

鎮静作用を有するカノコソウをはじめとして、ヒメコウゾおよびゲンチアナから得られた成分とその誘導体について、NGF増強作用を検討したところ、活性成分としてカノコソウ由来のkanokodiolを得た。PC12D細胞においてkanokodiolは単独では微弱な突起伸展作用を示し、NGF誘導性の突起伸展を顕著に増強することを見出した。KanokodiolはNGFによるMAP kinaseのリン酸化反応を増強させたが、MEKの阻害剤であるPD98059は、kanokodiolによるNGF誘導性の突起伸展増強を抑制しなかった。すなわち、本化合物はMAP Kinase非依存性のシグナル伝達経路を仲介してNGFによる突起伸展を増強することが示唆された。
一方、ソウジュツ成分のβ-eudesmolは単独でPC12細胞の突起伸展を誘導し、このβ-eudesmolの分化誘導作用はMAP kinase依存的であることが示唆された。また、本化合物がラットグリオーマ細胞C6において細胞内カルシウム遊離を引き起こし、NGFの遺伝子発現を誘導することを見出した。
さらに、担子菌ケロウジ成分であるスカブロニンGの誘導体であるスカブロニンGメチルエステル(ME)を新たに合成し、ヒトアストロサイトーマ細胞1321N1におけるNGFの合成・分泌に対する効果を検討した結果、スカブロニンGMEはスカゲロニンGより強力なNGFの合成・分泌増強作用を示し、その培養上清はPC12細胞の分化を著明に誘導することが明らかとなった。また、このスカブロニンGMEによるNGF合成・分泌の増強は、PKCζに直接作用して活性化させ、その下流に存在するNFKB依存的な転写を促進することに起因することが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Yu-Shan Li, at al.: "Littoralisone, a novel neuritogenic iridolactone having an unprecedented heptacyclic skeleton including four-and nine-membered rings consisting of glucose from Verbena littoralis"J. Org. Chem.. 66. 2165-2167 (2001)
• [文献書誌] Yutaro Obara, at al.: "Scabronine G-methylester enhances secretion of neurotrophic factors mediated by an activation of orotein kinase C-ξ"Mol. Pharmacol.. 59. 1287-1297 (2001)
• [文献書誌] Yu-Shan Li, at al.: "Verbenachalcone, a novel dimeric dihydrochalcone with potentiating activity on nerve growth factor-action from Verbena littoralis"J. Natl. Prod.. 64. 806-808 (2001)
• [文献書誌] Yu-Shan Li, at al.: "Potentiation of nerve growth factor-induced elongation of neurites by gelsemiol and 9-hydroxysemperoside aglucone in PC12D cells"J. Pharm. Pharmacol.. 53. 915-919 (2001)
• [文献書誌] Chil Mann Jung, at al.: "Two new monoterpene peroxide glycosides from Aster scaber"Chem. Pharm. Bull.. 49. 912-914 (2001)
• [文献書誌] Thitima Pengsuparp, at al.: "Pharmacological studies of geissoschizine methyl ether, isolated from Uncaria sinensis Oliv., in the central nervous system"Eur. J. Pharmacol.. 425. 211-218 (2001)