研究概要 |
平成12年度に引き続き、光屈性制御物質の構造解析と、光屈性刺激による光屈性制御物質の生合成経路について天然物化学、植物生理化学及び分子生物学的手法を用いて研究を行い、以下の知見を得た。1.光屈性制御物質の構造を解明するために、青色光によって誘導される成長抑制物質をクレス、モヤシマメ及びダイコンといった双子葉植物の芽生えから単離・同定した。NMRやMS分析から、クレスの成長抑制物質は4-hydroxy-2,3-dimethyl-2-nonen-4-olideであり、モヤシマメの成長抑制物質はkievitcmeで、ダイコンの成長抑制物質はraphanusol Aと1,2-Di-O-sinapoyl-β-D-glucopyranoseであることを明らかにした。以前得られた知見と総合すると、光屈性制御物質は植物種によって異なる可能性が高い。2.光屈性反応の見られないシロイヌナズナの突然変異株と野性株に、青色光を一方向から照射しそれぞれの下胚軸における物質の動態をHPLCで精査した結果、光照射によって野生株で増章し、突然変異株で増量しない物質を少なくとも2種類検出することができた。現在これらの物質の精製・単離を行っている。3.ダイコンの光屈性制御物質の生合成経路において、光屈性刺激によって光側組織でβ-thioglucoside glucohydrolase遺伝子の発現が誘導され、その酵素によって不活性型の4-methylthio-3-butenyl glucosinolateから活性型の)4-methylthio-3-butenyl isothiocyanateが切り出され、次いで活性型のraphanusaninが合成されることを明らかにした。
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