有機小分子と生体高分子との相互作用の研究は有機化合物による分子認識機構を解明するとともに医学・生物学の分野では生物活性物質の作用機構解明や医薬品開発につながる必須の研究領域である。今回、対象生体高分子として細胞骨格タンパク質のアクチンと新型のプロテインホスファターゼに着目した。 海洋動物アメフラシから単離されたアプリロニンAは、細胞骨格タンパク質のアクチンに作用する新しい型の抗腫瘍性物質である。これまでの知見よりアプリロニンAの側鎖部がアクチン脱重合活性に重要な部分構造であることが判明していたので、アプリロニンAの約十分の一の活性を持つ側鎖部人工類緑体に光アフィニティ官能基を導入した誘導体2種を合成した。これらの化合物とアクチンの反応を行ったところ、アクチンを効率良く標識することが明らかとなった。現在は、標識部位の特定のために、標識体の酵素加水分解と断片の構造を検討している。 最近、9-アントラセンカルボン酸(9AC)に阻害されるこれまでには知られていない型のプロテインホスファターゼが存在していることが報告された。そこで、9AC誘導体を設計・合成し、これらのブロテインホスファターゼ阻害活性を検定した。その結果、3位にリンカーをつけた誘導体は目的とする酵素を阻害することが分かった。 新型の海洋産細胞毒性物質ハテルマライドNAの構造確定と標的分子検索を目的として、合成研究を行い、提出していた構造を修正した。
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