研究概要 |
(1)変形菌の採取と発芽実験:全国各地で採取した変形菌の子実体および菌核168株について胞子の発芽実験を行った結果,60株に発芽が観察された.実験条件の改良により当初3.5%だった発芽率が61%に向上した.また34株が変形体を形成し,さらに16株が子実体を形成した.Didymium属は発芽しやすく,変形体・子実体も他の属に比べて形成しやすいことが明らかとなった. (2)Didymium minus(コカタホコリ)の培養変形体の成分と変形体成長への影響の観察:本菌の寒天平板培地上での変形体の大量培養を行い,抽出物を各種クロマトグラフィーにて分画した結果,glucoclionasterolをはじめとする数種のステロイドを単離した.本菌の培養子実体について培地に単離したステロイドを添加することにより,変形菌におけるステロイドの役割を調べる実験を行った.その過程で,培地の乾燥が変形体の成長を妨げることが分かった. (3)その他の培養変形菌の成分スクリーニング:培養が可能となった数種の変形菌の変形体,子実体を収穫しTLC分析を行ったところ,Physaarum rigidum, P. melleumおよび菌核(Badhamia sp.と予測された株)由来の変形体に各々異なる色素成分の存在が認められた.またこれら菌体の粗抽出物にはBacillus subtilisに対する抗菌活性が認められた. (4)変形菌Lindbladia tubulina(フンホコリ)の野外採集子実体の成分:本菌は変形菌の中でも比較的大きな子実体を形成し,その大きさは5cm四方を超えることがある.2001年に採取された本菌の子実体(7.2g)を抽出し,各種クロマトグラフィーにより分画した.その結果,色素成分としてlindbladioneおよびその類縁体2種を単離した.
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