本研究では、ナフテルピンの生合成機構の解明を目的として、ナフテルピンの生合成に関与する遺伝子の取得を試みた。ナフテルピンはメバロン酸経路で合成されることが判明していることから、メバロン酸経路遺伝子クラスターを含むDNA断片をプローブとして、ナフテルピン生産菌Streptomyces sp. CL190株のコスミドライブラリーからハイブリダイズするDNA断片をクローニングした。次いで、得られたメバロン酸経路遺伝子クラスター上流域約17kbpの塩基配列を決定したところ、この領域には、合計13個のorfが存在していることが判明した。相同性検索により、orf5は放線菌由来のテトラヒドロキシナフタレン(THN)生合成遺伝子rppAと66%の相同性を示した。ことことは、ナフテルピンはTHNを経由して生合成されると推定されていることから、rppAホモローグであるorf5はナフテルピンの生合成遺伝子である可能性が極めて高いと考えられる。orf8は放線菌由来のC-methyltransferaseと28%の相同性を、またorf11はS-adenosylmethionine synthaseと88%の相同性を示した。これまでのトレーサー実験から、ナフテルピンの7位のメチル基はメチオニン由来であることが明らかにされていたことからorf8はナフテルピンの前駆体と考えられる7-デメチルナフテルピンを基質としたメチル化を触媒する酵素をコードすると考えられた。さらに、orf2の破壊株を作成し、蓄積する代謝産物の検索を行ったところ、予想外にも、スクアレンが蓄積していた。このことから、orf2の機能は、THNにゲラニル基を付加する反応を触媒するプレニルトランスフェラーゼをコードしていることが強く示唆された。さらに上流のorf13は、相同検索から、ゲラニル2リン酸合成酵素であることが示唆された。これは、原核生物からクローニングされた初めての例である。
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