まず、ゲルろ過クロマトグラフィーの活性画分の一つから主要成分を単離し、NMR及びフォトダイオードアレイHPLCを用いてベタインの一種トリゴネリンであることを明らかにした。トリゴネリン及びその類縁体であるホマリン、ニコチン酸の活性を試験したが、どの化合物も活性を示さずむしろ忌避作用を示した。 次にフェロモンの精製法を検討した。雌尿を脱塩しTFA/水を移動層として用いた逆層HPLCで3画分に分画し活性試験を行った。その結果、全ての画分が活性を示した。次に、イオン交換樹脂に対する吸着試験では陽、陰イオン交換樹脂共に非吸着画分は活性を示した。しかし吸着画分に活性が見られたのは陽イオン交換のみであつた。分子量約300以下のイオンを除去する処理では、処理した尿は元の尿よりは弱いが活性を維持した。以上の結果より、フェロモンは複数の化合物から構成されると考えられる。 最後に、オス尿とメス尿の成分比較を行い、オスの尿のみに大量に含まれる化合物を単離、構造解析したところ、上述のホマリンであった。雄尿中のホマリンが抱きつき阻害活性をもつことによって、雄は雌にしか抱きつかない機構が考えられた。ホマリンの抱きつき阻害活性試験を来シーズン行う予定である。
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