研究課題
特定領域研究(A)
本研究では、精子に発現している嗅覚受容体様タンパク質のリガンドを同定することにより、精子におけるその機能および役割を解明することを目的とする。まず、嗅覚受容体ファミリーで保存されているアミノ酸配列からデザインした縮重プライマーを用いて精子発現新規嗅覚受容体遺伝子TOR1をクローニングした。組織発現分布の解析をin situ hybridizationおよびin situ RT-PCR法を用いて行ったところ、TOR1は、嗅上皮では一部の嗅神経細胞に発現しているが、精巣ではすべての精子形成段階の細胞に発現していることが確認された。すなわち、精巣における嗅覚受容体の発現様式は嗅上皮における発現パターンとは異なり、生理的機能にも違いがあることが推測される。現在、他の精子発現嗅覚受容体も含めて、発現パターンの詳細な解析を行っている。次に、これらの精子嗅覚受容体を機能的に発現させ、リガンド応答を測定するアッセイ系の検討を行った。HEK293細胞で三量体Gタンパク質αサブユニットの一種であるGα15と共発現させ、カルシウムイメージングにより嗅覚受容体の匂い応答アッセイ法を確立した。まず、精巣と嗅上皮に発現している嗅覚受容体MOR23を用いて精巣での内在性リガンドの同定を試みた。MOR23は嗅上皮において匂い物質Lyralを受容することから、精巣内でもLyralのような低分子有機化合物を内在性リガンドとしていると推測される。そこで、卵巣と子宮から酢酸エチルを用いて低分子化合物を抽出した。しかし、MOR23を発現させたHEK293細胞においてカルシウム応答は観察されず、酢酸エチル抽出液中にはリガンドが含まれていないことが示唆された。今後、抽出方法の検討を行い、MOR23受容体を発現させた細胞で特異的にカルシウム応答がおこる分画を探索し、精子嗅覚受容体MOR23の内在性リガンドの同定を目指す。
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