研究概要 |
生体内には,スペルミジン・スペルミンに代表される20種を超えるポリアミン類が存在し,これらは前立腺,膵臓,がんなど分泌活性やたんぱく質・核酸合成の盛んな組織中に多く含まれている.これらポリアミン類の機能は,核酸の安定化,核酸合成系の促進作用,細胞膜の安定化や化学物質の膜透過性の強化など多岐にわたっており,種々の生物現象の鍵物質となっている. 本特定領域研究では,ポリアミン類の作用機序・生物現象の解明および探索を目指し,ポリアミン類の生体内機能制御分子を創製することを目的とする.この検討では包接化合物による錯形成を鍵とした超分子化学的手法を用い,ポリアミン包接錯体の構造活性相関研究を行う.包接化合物として,ポリアミンと選択的にロタキサンを形成するクカビト[6]ウリル(CB[6])に着目し,(1)その機能探索および(2)類縁体合成手法の開拓を行う. 本年度は,このうちCB[6]の天然ポリアミン分子の機能調整因子としての機能探索を行った.その結果,CB[6]が(1)ポリアミンのTopoisomerase Iの反応促進効果を増強させること,および(2)制限酵素の反応抑制効果を軽減させることを持つことを見いだした.ポリアミン・DNA錯体の原子間力顕微鏡による直接観察により,このCB[6]によるポリアミンの機能制御効果がポリアミン・DNA錯体の凝集状態の変化によるものであることが示唆され,現在その作用機序を解明すべくさらに詳細な検討を行っている.
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