研究概要 |
研究分担者の松田は、病原性M. fermentansの膜脂質の主成分に新規糖リン脂質(GGPLs)が存在することを見い出した。GGPLsは、本菌の主抗原そのものであること、またAids患者の多くが、GGPLs抗体を持つことが明らかとなった。研究代表者らは、有機化学的なアプローチによって、平面構造が明かとされているGGPLsのうち、I型とIII型の絶対配置を決定した。本研究では、天然GGPLsの化学合成法を確立し、それらの生理活性を分子レベルで明かとすることを目的とした。 1)α-グリセロ糖脂質の立体選択的合成法の確立とGGPLs光学異性体の合成 GGPLsの主骨格を構成するα-グリセロ糖脂質の立体選択的合成法を開発した。水分子に影響されない実用的α-グリコシル化法として、4臭化炭素とトリフェニルフォスフィンを用いるワンポットグリコシル化法、又、無臭性チオドナーを用いるnon-malodorousグリコシル法をそれぞれ開発した。光学活性グリシドールとのグリコシル化により、Sn-1とSn-3の両方の立体配置を持つGGPL-Iを合成した。さらに、ガラクト型配置を持つGGPL-I異性体も同時に合成できた。 2)GGPLs多価モデルの合成と免疫賦括活性 GGPLsは、マイコプラズマの膜成分として存在し、クラスター構造を構築することで、免疫細胞への吸着などの生物活性を示すと考えられる。従って、GGPLsクラスターモデルは、GGPLsの生物活性を知る上で重要な化合物となりうる。本研究では、GGPL-I, II, III型をそれぞれ側鎖に有する人工高分子化合物を合成した。さらに免疫賦括活性をGGPLsと比較を行った結果、血清に分散させた天然GGPLs(IとIII型)には、インターフェロン(TNFα、IL6)の生産活性がほとんど確認されなかったが、GGPLsクラスターモデルは濃度に依存した明らかな活性を示し、強い多価効果が確認された。そのうち、GGPL-IIには、極めて強いインターフェロン誘導活性が確認され、エイズ、白血病、リュウマチの治療に有効なのワクチン開発に大きな手がかりを得た。
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