発光生物の化学的な発光メカニズムに関しては詳細な研究例が多くあるが、発光基質ルシフェリンの生合成研究に関する知見は殆どない。本研究では、ウミホタルを用いてこの問題に取り組んできた。昨年度までに我々は、ウミホタルのルシフェリンがL-トリプトファンから生合成されることを世界に先駆け明らかにした。本年度は、同様の同位体標識したアミノ酸のウミホタルへの投与実験から、トリプトファンの他にL-アルギニンとL-イソロイシンがルシフェリンの生合成基質となりうることを証明した。すなわち、1966年の岸・後藤らの予測-「ウミホタルルシフェリンは3つのアミノ酸から生合成されるだろう」-が37年ぶりに実験的に証明されたことになる。LC-MSなどの分析技術を使うことにより、こうした特異な構造を有する微量生体有機化合物の生合成経路が明らかにできたことは、今後の様々な生体鍵物質の研究発展に対しても大きく貢献できたものと自負している。
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