海洋生物由来の細胞接着阻害物質による癌治療への応用

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13024250
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 松浦 成昭 大阪大学, 医学部, 教授 (70190402)
• 研究分担者: 河口 直正 大阪大学, 医学部, 助手 (70224748) ; 東山 繁樹 大阪大学, 医学部, 助教授 (60202272)
• キーワード: 血管新生因子 / 細胞接着 / 海洋生物 / 細胞運動 / 細胞浸潤 / 細胞増殖

研究概要

海洋生物からの有用物質の検索の1つとして、血管新生阻害物質に焦点をあてて研究を行った。使用した海洋生物として、カイメン(丸)、カイメン(黄)、カイメン(紫)、カイメン(黒)、カイメン(ぬるぬる)、らん藻(茶)、らん藻(緑)、カメノテの8種類の生物で、これらからの抽出物における血管新生抑制作用について検討した。
検討した細胞として血管内皮細胞の形質をもつ癌細胞ECV304を用いた。この細胞に対して、まず、DNA合成能をみるBrdU(bromodeoxyuridine)取り込みアッセイによりこの8種類の海洋生物の抽出物でスクリーニングを行い、最もDNA合成の阻害作用の強かったカメノテに対して、以下の検討を行った。陽性コントロールとして5FUの代謝産物であり、血管新生阻害作用が確認されているGHB(γ-hydroxybutyrate)100μM/Lを用いた。
1)細胞増殖能の検討としてWSTアッセイを行ったところ、カメノテ・GBHとも有意な増殖能の阻害はみられなかった。
2)細胞接着能を細胞外基質であるコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンに対する接着アッセイで検討したところ、いずれの基質に対する接着も抑制を認めた。特に、コラーゲンに対しては著明な接着阻害効果を認めた。
3)ランダムな細胞運動能をみるwoundアッセイを行ったところ、抑制効果を認めたがGHBに比べると軽度であった。
4)基底膜への浸潤能をみるマトリゲル浸潤アッセイではカメノテはGHB同様、著明に細胞浸潤を抑制した。
5)コラーゲンゲル三次元培養アッセイにより管腔形成能の検討を行ったところ、カメノテはGHB同様に著明に管腔形成を阻害した。

研究成果

• [文献書誌] Kitada T, et al.: "Addition of bisecting N-acetylglucosamine residues to E-cadherin downregulates the tyrosine phosphorylation of beta-catenin"J Biol Chem. 276. 475-480 (2001)
• [文献書誌] Ito Y, et al.: "Expression and clinical significance of erb-B receptor family in hepatocellular carcinoma"Brit J Cancer. 84. 1377-1383 (2001)
• [文献書誌] Miyake Y, et al.: "Extensive micrometastases to lymph nodes as a marker for rapid recurrence of colorectal cancer : a study of lymphatic mapping"Clin Cancer Res. 7. 1350-1357 (2001)
• [文献書誌] Ito Y, et al.: "Activation of c-Src gene product in hepatocellular carcinoma is highly correlated with the indices of early stage phenotype"J Hepatol. 35. 68-73 (2001)
• [文献書誌] Hayashi N, et al.: "Differential expression of cyclooxygenase-2(COX-2) in human bile duct epithelial cells and bile duct neoplasm"Hepatology. 34. 638-650 (2001)
• [文献書誌] Okada Y, et al.: "Genetic detection of lymph node micrometastases in patients gastric carcinoma by multiple-marker reverse transcriptase-polymerase chain reaction assay"Cancer. 92. 2056-2064 (2001)
• [文献書誌] 松浦成昭, 他: "肝疾患研究の新しい展開"メディカルレビュー社. 141 (2001)