研究概要 |
褐藻遊走細胞の走光性光センサーの候補となっている鞭毛局在の蛍光物質の単離と構造解析を行った。褐藻遊走細胞はミドリムシ藻と同様にUV励起により鞭毛関連の構造体から緑色蛍光を発する。しかし、両者の系統性は大きく隔たっているので、同じ光センサーが機能している可能性は低い。ミドリムシ藻では光センサー分子が単離され,フラビン結合とアデニル酸シクラーゼのドメインを2組づつ持つ105kDと90kDの相同性の高いサブユニットが同定された。精製タンパク質のアデニル酸シクラーゼ活性は、青色光により上昇する(Iseki et a1.2002)。 [蛍光色率の同定]ミドリムシ藻のUV励起蛍光は530nmに,褐藻カヤモノリ遊走細胞は510nmに極大を示し、両者で異なる色素分子の関与を示唆した。Yamano et al.(1996)の解析では、カヤモノリ藻体のメタノール抽出物に4',5'-cyclicFMNが検出され、鞭毛蛍光との関連が議論されている。ミドリムシ藻の色素FADは検出されない。藻体成熟部からメタノールで色素を抽出し,水-酢酸エチルで分配した水層を集め、HP-20カラムクロマトで分離した。2つの蛍光画分が得られ、RTと蛍光からフラビン化合物と判明したが、コンタミの糖鎖のシグナルが強く、NMRによる分子種の同定は困難であった。現在、精製法の改良と遊走細胞からの抽出を進めている。 [蛋白質の同定]褐藻を冷暗所で成熟処理した後、遊走細胞を放出させた。濾過,遠心分画により珪藻などを除いた後、Vortex処理と遠心で鞭毛粗画分を得た。蛍光顕微鏡での観察では、intactな構造と緑色蛍光を保持した単離鞭毛が確認された。鞭毛を界面活性剤で可溶化し、遠心と硫安分画で精製を行ったところ、50kDのペプチドが光センサー蛋白質の候補になっている。今後,褐藻特有の粘液物質の除去が課題である。
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