研究概要 |
黄色植物の光運動反応に関わる新規の光センサー(青色光受容体)の候補となっている遊走細胞の後鞭毛に局在する緑色蛍光物質(フラビンタンパク質)の単離と構造解析を褐藻カヤモノリScytosiphon lomentariaを用いて行った。 単離鞭毛分画を用いてフラビンタンパク質の最適可溶化条件を検討したところ,凍結融解後にBis-Tris緩衝液(pH6.5)に溶出させた場合が最も効率が良かった。フラビンタンパク質を含む可溶分画を,限外ろ過で濃縮し陰イオン交換クロマトグラフィーによって分離精製した。0.1M NaClで溶出する画分に、フラビン蛍光が顕著に検出され、蛍光スペクトルと電気泳動のパターンを比較した結果、フラビン結合タンパク質の候補として41kDaのタンパク質が有力になった。次に、イオン交換精製した分画をゲルろ過クロマトグラフィーでさらに精製したところ、フラビン蛍光分画に41kDaタンパク質が主要バンドとして検出された。この41kDaタンパク質をプロテインシーケンスしたところ、N末端がブロツクされていた。そこで、V8プロテアーゼを用いたゲル内消化により、いくつかのペプチド断片を得てアミノ酸配列を解析した。その結果、20残基程度のアミノ酸配列が判明した。この配列は、ある種の細菌由来のフラビンタンパク質(機能未解明)に部分的に類似していた。 フラビンの化学種については、イオン交換で精製した41kDaタンパク質を含む分画を熱処理で可溶化した試料について、薄層クロマトグラフィーにより分析した。Rf値から41kDaタンパク質の結合フラビンはFMN (flavin mononucleotide)とほぼ一致した。現在、精製法の改良、精製標品の分光解析、遺伝子のクローニングを進めている。
|