研究概要 |
1.変異Na, K-ATPase遺伝子を導入した発現した酵母におけるパリトキシンの作用. パリトキシンはNa, K-ATPaseのαサブユニット内にあるチャネルを開口した状態にするので,チャネルの機能を調べる道具として利用できる.αサブユニットはCa-ATPaseと相同性が高いので,ATP加水分解部位をCa-ATPaseのそれと置換したキメラ遺伝子を作成し,本来Na, K-ATPase遺伝子を持たない酵母Saccharomyces cerevisiaeに発現させて,パリトキシンによるK^+流出作用を観察した.パリトキシンは触媒部位をCa-ATPaseタイプにした遺伝子を発現した酵母においてもK^+流出作用を示し,チャネル機能は触媒部位の種類に依存しないことが明らかとなった. さらにウアバインなど強心配糖体はNa, K-ATPaseのATP加水分解を抑制して,能動輸送を阻害する物質であるが,パリトキシンのチャネル誘導作用に拮抗する.Na, K-ATPaseとCa-ATPaseのキメラを発現した酵母においてウアバインはパリトキシンの作用に拮抗した. 2.Na, K-ATPaseの活性状態とパリトキシンの作用の関係 Na, K-ATPaseは細胞内Na^+とATPに親和性が高いE1状態のときこれに結合し,活性を阻害する.一方,オリゴマイシンは細胞外K^+に親和性が高いE2状態に結合して活性を阻害する.オリゴマイシンは赤血球でのパリトキシンによるK^+流出作用に拮抗しなかった.これよりパリトキシンはE1状態のとき,酵素に結合すると推定した.またウアバインが酵素活性を阻害することとチャネルをブロックすることは関係ないことが示唆された. Na, K-ATPaseは各種のプロテインキナーゼによってリン酸化されると,活性が変化する.プロテインキナーゼによるリン酸化でパリトキシンチャネルの機能が変わるかを検討した.プロテインキナーゼCやプロテインキナーゼAの活性化はパリトキシンの作用に影響しなかった.しかしプロテインキナーゼGの活性化はパリトキシンの作用を増強した.現在,プロテインキナーゼGによって酵素の活性化がどう変わるかを検討中である.
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