研究概要 |
共生窒素固定におけるシグナル分子やファイトアレキシンとして働き,機能食品栄養としても注目されるマメ科の5-デオキシイソフラボノイドの生合成反応機構を,クローニングされた遺伝子の異種細胞発現系により明らかにするのが目的である. 5-デオキシ構造の構築には,6'-デオキシカルコンを基質とし得るカルコン異性化酵素(II型CHI)が必須である.マメ科モデル植物ミヤコグサより取得したCHIアイソザイムcDNAには,マメ科ばかりでなく非マメ科植物の既知CHIと相同性なものがあり,大腸菌発現系においても,II型の活性と,6'-ヒドロキシカルコンのみに働くI型の活性を示すものに分かれた.これは同一植物から機能の異なるCHI cDNAを得た初めての例である.これらの遺伝子はゲノム中でクラスターを成し,分子系統樹から,マメ科のII型CHIは原CHI遺伝子の重複で生じ,新機能を獲得したものと推定された.また,関連酵素との配列の比較とホモロジーモデリングを基に,シトクロムP450の一種インフラボン骨格合成酵素(IFS,CYP93C2)の変異タンパク質を作製し,酵母発現系で触媒機能を調べるとともに,改変基質を用いた反応の解析を行った.その結果I-ヘリックス上のSer310は,活性部位に空間的余裕をもたらしアリール転位を促進すること,Lys375は基質フラバノン7位のヒドロキシル基との相互作用を通じた基質認識に関わり,転位反応に必須であることがわかった.これらの変異タンパク質の機能は,IFSがP450型フラバノン3-ヒドロキシラーゼから進化した可能性を示している.さらに,ファイトアレキシン中間体formononetinの生合成に関与する.2-ヒドロキシイソフラバノン4'-メチル基転移酵素(4'-OMT)の本体を明らかにしつつある.4'-OMTの細胞内局在性と他のタンパク質との相互作用に興味が持たれる.
|