研究概要 |
本研究は,Dictyostelium細胞性粘菌の増殖・分化など生活環に関与する物質を明らかにすることを目的に進めた.D.discoideumの子実体のメタノールエキスの成分検索を進めたところ,アミノ糖由来と考えられる2種の化合物furanodictine AおよびBを単離した.これらの化合物はそれぞれfuranose型のN-acetyl-D-glucosamine及びN-acetyl-D-mannosamineがさらに3-6位でfuran環を形成した1,6-dioxabicyclo[3.3.0]octane骨格を持つ特異なものであった. また,dictyopyrone Cについて,アメーバの集合などに対する効果を検討した.その結果,10-20μg/mLの比較的高濃度においては,アメーバは細胞集合が顕著に阻害されるばかりでなく,多くの細胞は丸くなり運動性を失うことがわかった.一方,1-2μg/mLの低濃度においては細胞集合による多細胞体の形成が早まった.しかし,通常集合体は約20時間で子実体を形成するが,dictyopyrone Cを加えたものは集合体を形成した段階で形態形成を停止し,移動体や子実体にまで発生するものはごくわずかであった.このことから,dictyopyrone Cは細胞性粘菌の持つ生理活性物質として,多細胞体形成段階に関与していることが示唆された. 現在,dictyopyrones, dictyomedinsなど細胞性粘菌の生活環に関与する物質の存在,あるいはそれらの消長について検討するため,細胞性粘菌を飢餓処理後,ステージを同調させる培養方法により,アメーバ,集合体,移動体,子実体をそれそれ集めているところである.
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