研究概要 |
本研究目的は、リガンドである11Z-レチナールとその13位周辺に位置するオプシンアミノ酸残基との相互作用を調べるため、共役したペンタエン構造を有し13位を修飾した11Z-レチナールを立体化学を制御して合成することである。 平成13年度の本研究において以下のような新しい成果を得ることが出来た。 末端にシリルオキシ基の置換した1,1-ジブロモアルケンを出発原料に、パラジウムを触媒に用いる段階的クロスカップリング反応により、置換アルケンの立体化学を制御した。すなわち、一段階目で園頭反応によりトリメチルシリルエチニル化し、収率81%でE-ブロモエンインを選択的に得、続いて二段階目で鈴木クロスカップリング反応を用い、アリール基が立体保持で導入された3置換エンインを立体特異的に高収率で得た。以後2段階でZ, E-ヨードジエンに導いた。しかしながら、得られたZ, E-ヨードジエンはシリルオキシ基、アリール基、ヨード基がシス配置をとっており、ジイミドによる還元の際に酢酸により11-15%程度異性化を起こすことが分かった。そこで、15位水酸基をシリル基で保護することなく一連の官能基変換をおこなったところ、Z, E-ヨードジエンを純粋に得ることが出来た。13位に芳香環が導入できたことから、芳香環に予め置換基としてアセタールの置換した原料から出発し、相当する誘導体も合成することができた。これらのヨードジエンはすでに合成したトリエニルホウ酸とカップリングさせることにより前駆体であるペンタエニルアルコールに立体特異的に誘導することができた。続いてバリウムマンガネートによる酸化で13位アリール置換11Z-レチナールに導くことができた。本成果により13位に芳香環の置換した11Z-レチナール誘導体の合成経路が開拓されたことになる。
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