研究概要 |
従来,ULSIはデバイスサイズを縮小化することにより動作速度の向上,メモリー容量の向上などを達成できたため,比例縮小の法則はデバイス高機能化の指導原理として長らく定着してきた。しかし,ゲート幅0.25μm以降の世代では,縮小に伴う数々の弊害が顕在化し,比例縮小によるデバイス性能向上を維持するには,新規材料の導入などを余儀なくされている。例えば,多層配線ではRC遅延時間の増大に対処するため,従来のシリコン酸化膜に代わり,低誘電率層間絶縁膜を採用するとともに,Alよりも抵抗が低くエレクトロマイグレーション耐性の高いCuを利用するようになっている。このように,多種多様な材料のグローバルインテグレーションは比例縮小に代わるデバイス高機能化の指導原理となりつつある。しかし,これを実現するには,多種多様な下地表面上にステップカバレッジ良く均一に製膜するCVD技術やどのような材料でも制御性良くエッチングするドライエッチング技術の確立を要求される。特に多層配線用金属薄膜のCVD合成では,下地の材質,表面状態によって製膜初期に数ナノメートルから数十ナノメートルの縞状組織が形成されるため,連続膜形成が難しく,デバイス微細化に対する大きな課題となっていた。本研究では,このような状況に対処するため,原料ガスの交互供給など,変調操作を基本とするCVDプロセスの構築と高度化を目指している。 平成13年度は,Al, Cu, WのCVD合成において,レーザ光反射強度変化のその場観察を基に,製膜初期の核発生・成長に関する解析を行った。波長670nm程度の赤色レーザ光の反射強度は製膜初期には下地基板材料の反射率に対応する値を示すが,表面に縞状組織が形成されるとその強度はいったん低下し,縞状組織が融合して連続膜化すると再び反射強度が増大する。このことを利用して,核発生に至る誘導期(Incubation Time)を同定することが可能となり,この間の表面状態変化を観測した。その結果,Al, Cu, Wいずれの系においても,製膜初期から少しずつ各製膜種が吸着し,1〜2ML程度の吸着となった段階で核発生することが分かった。フッ酸処理などにより,Incubation Timeの変化を考察するとともに,パルス的な原料導入などが核発生段階に及ぼす影響について系統的なデータの収集を行った。これを基に,来年度は下地表面状態に依存せず安定に核発生できる変調操作を構築する予定である。
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